あなぐまブックログ

読書と暮らしの記録を気ままにつづります。

『つまらない住宅地のすべての家』津村記久子|双葉文庫

www.futabasha.co.jp

 

とある町の住宅地の路地。

自治会で必要最低限のご近所付き合いをしていた住民たちだったが、脱獄犯がこの町の方へ逃走しているというニュースを受け、夜間監視の自警団を組織することになって──というお話。

 

人数が多いので登場人物表を度々見返しながら読んだが、(名前は覚えられないとしても)キャラクターとして頭の中に思い描けるギリギリくらいの人数だった。

そのギリギリ感がよかった。忘れた頃に伏線回収があると、気持ちがいいので。

 

個々の家と人間たちはそれぞれに事情を抱えているが、そのすべてに作中でわかりやすい解決が与えられるわけではない。それでもラストに爽やかさを感じてしまうのは、彼らが他者と関わる(多くが『関わる』であって『交わる』ほどではない)ことによって、各々が得た新たな視点から問題を見つめられるようになるからだと思う。

 

ドラマ化したらおもしろいだろうな〜と思っていたら、NHKでもう映像化されていた。機会があれば観る。