あなぐまブックログ

読書と暮らしの記録を気ままにつづります。

『ここはすべての夜明けまえ』間宮改衣|早川書房

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Twitter・現Xで、小島秀夫監督が言及していて興味を持った一冊。

 

 

 

川上未映子の文体が大好き、漢字を開きに開きまくった文体(桜井晴也とか)も大好きなので、即買って積んでおいた。仕事で予定外の残業をしてへろへろになった日に、すべての用事を済ませ、お風呂に籠もって一気に読んだ。

 

主人公の女性は1997年生まれで、わたしと同年代だ。作中には聞き馴染みのあるボカロ曲の数々が出てきたりして、いっそう彼女に親近感を覚える。しかし、彼女は肉体の老化を止める特殊な"融合手術"を受け、100年以上の人生を生きることになる。

長い時を生きているのに、彼女の語りには終始(漢字の少ない文体も影響しているが、それだけではない)幼さを感じた。百歳をとうに超えているのに、語りから見えてくる彼女の趣味嗜好のどれもが10〜20代にかけて浴びたものばかりだったのが、読み進めているとじわじわと効いてくる。

 

読後、「SFってこういうアプローチもあるんだ」としみじみと嬉しくなり、『いずれすべては海の中に』(サラ・ピンスカー|竹書房文庫)を思い出した。単に書名に共通点を見出しているのではなく、SFの世界観でミクロな個人へアプローチする手法について。

 

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